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3 約束を守ってくれたんだ……6

Penulis: ひなの琴莉
last update Terakhir Diperbarui: 2025-08-22 01:25:58

「お料理、作ったんですが……。もしよければ召し上がりませんか?」

「作ってくれたのか?」

「はい、お口に合うかわかりませんが」

「ありがとう」

 こんなにテンションの上がった姿を見たことはない。

 テーブルに食事を並べる。今日はハンバーグとワカメのスープと、ポテトサラダを作った。

 悠一さんは瞳を輝かせている。いつも真剣な表情をして仕事のことを考えている。彼からは想像がつかない可愛らしい顔だった。母性本能をくすぐる。

「いただきます」

「どうぞ」

 口に入れると何度も覗いてくれた。

「美味しい。美月の手料理を食べられる日が来るなんて感動だ」

「そんなに喜んでくれるなんて……よかったです」

「実は家庭料理をほとんど食べたことがないんだ。母は料理が得意じゃなくて、家政婦さんに作ってもらっていたから。それぞれ作ってくれていた料理は美味しかったけど、家の味というのがなくて」

 そう言って残さず食べてくれた。

 財閥の息子として幸せそうと思われてしまうこともあるかもしれないが、彼なりに辛い思いをしてきたのだろう。

「そうだったんですね」

「あぁ、母は料理は不得意だけど優しくて素晴らしい方だ。仲良くしたいと言っていたし、母ともお茶をしてあげてくれ」

「わかりました。私でよければお供させていただきます」

「過去はずっと……両親のことを憎んでいたんだ。親の決めたレールの上を歩かされているって思っていたんだけど。美月に会ってから気持ちを入れ替えて、全てのことに感謝しながら接するようになって。そうすると親の態度もだんだんと変わっていった」

 穏やかな表情で話しているのを見て私は少し安心した。

「美月、ありがとな」

「いえ……私は何も」

 悠一さんの笑顔を見ることができたら私はそれだけでいい。そんなふうに思ってしまった。

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